【石母田星人 選】

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残る鴨湖の夕日をこなごなに  (石巻市小船越・三浦ときわ)

【評】晩春になっても北へ帰らず居残っているのが「残る鴨」。傷ついたり、病気になったりして群れに加わることのできなかった鴨だ。仲間の鳥たちがいた水面にポツンと浮かぶ姿には寂しさが募る。とはいえ掲句の鴨は寂しさよりも開放感に浸っているようだ。夕日を映す水面を伸び伸びと独り占め。着水の揺れを固体に使われる「こなごな」とした見立てが効いた。

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野遊びに子の直球を受けにけり  (東松島市矢本・紺野透光)

【評】「子の直球」と球種を絞ったことが効果的。直球は球種のうち球速が最も速いものをさす。ただのキャッチボールではなく真剣勝負の趣。その球を受け止めたグラブが小気味いい音を立てた。子どもの力を感じるのは親の最高の喜び。春の日差しが心地いい。

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大堰を煌めき跳ねる春の水  (石巻市小船越・芳賀正利)

【評】ただの堰ではなくて大堰。大の文字から勢いよく豊かな水量が見えてくる。水は光り輝き、水音も高い。万物の命を育む躍動だ。臨場感あふれる一句。

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ものの芽をほぐし十一日の雨  (石巻市桃生町・西條弘子)

【評】あの日の強い雨は、被災地の固い草木の芽をほぐしてくれる優しい雨だったのだ。夕空に出現した虹もきっとあの雨が手配してくれたものに違いない。

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清明の空見あげたる鹿アート  (東松島市矢本・雫石昭一)

啓蟄やエスカレーター地の底へ  (石巻市小船越・加藤康子)

麦踏やメソポタミアのくさび文字  (東松島市新東名・板垣美樹)

八年の春を経て来し星あかり  (石巻市桃生町・佐々木以功子)

春愁やペットボトルの蓋固く  (石巻市中里・川下光子)

参道の箒目清し春なかば  (仙台市青葉区・狩野好子)

遠洋に深き祈りの弥生かな  (石巻市開北・星ゆき)

灼熱の野火は命のこやしかな  (石巻市門脇・佐々木一夫)

托鉢の顎紐なおす春一番  (東松島市矢本・菅原れい子)

旅終へて眠りあづける春炬燵  (石巻市広渕・鹿野勝幸)

地下足袋を履けば田畑耕せり  (石巻市吉野町・伊藤春夫)

梅一輪たしかその頃大震災  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

固まらぬ茶碗蒸しかな鳥雲に  (東松島市野蒜ケ丘・山崎清美)

還暦の子の退職や三月尽  (石巻市南中里・中山文)

濁流の汚水に浮かぶ椿かな  (東松島市赤井・茄子川保弘)

百歳の義母の祝ひや春ショール  (角田市角田・佐藤ひろ子)

【水戸一志 選/評】

◎五七五はもちろん川柳の意。日常生活や国内外の動きを注意深く観察し、五七五の17音字で世の中の今を表現する。簡単なようで難しい。作者は、「見ているぞ」の五文字で、川柳の本質を自分に言い聞かせている。

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◎ 見ているぞ五七五で世の中を  (石巻市向陽町・佐藤功)

  歳かさね年号三つ渡り初め  (石巻市駅前北通り・津田調作)

  耕運機エンジン音がスキップし  (東松島市赤井・片岡シュウジー)

  春いいね!花粉なければもっといい  (石巻市大街道・岩出幹夫)

  出不精に春の息吹が手招きし  (石巻市蛇田・梅村正司)

  待ってねとレンジに話すわれ独り  (角田市角田・佐藤ひろ子)

  乗りません詐欺の揺さぶる口車  (石巻市桃生町・忖度放恣)

  十一万超えた署名もゴム風船  (石巻市蛇田・菅野勇)

業種◆障害のある成人を対象とした
   福祉事業所です。
職種◆生活支援員(日常生活の支援)
資格◆普通自動車免許(AT限定可) 
障害福祉関連の業務経験あれば尚可
年齢◆59歳以下(60歳定年)
勤務◆8:30~17:30 
   週休二日制(日・月・祝)
月給◆固定給17万円~17.5万円
   (一律手当含む)
待遇◆社会保険完備,退職金制度有
マイカー通勤可,賞与有年2回,家族,
家賃,資格等各種手当有,通勤費支給
応募◆電話連絡の上、応募書類を
   郵送願います。担当/佐藤
   受付時間火~土10:00~17:00

■勤務地 仙台市内
■時 間 17:00~9:00(夜間)
■給 与 委細面談
■応 募 お電話下さい
年齢不問、中高年、定年退職者歓迎



■勤務地 若林区新寺
■時間A,8:30-17:00 B,11:30-20:00
(シフト勤務) ■給与13万円
賞3月、交通費、1年毎契約
社保完備、有給休暇有、履歴書郵送

資格◆要大型免許、子ども好きな方
日 給◆6,000円(交通費含む)
勤務地◆鷹乃杜幼稚園あるいは
ひより台幼稚園
応募◆電話連絡の上、履歴書持参

【佐藤 成晃 選】

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次々と波まじわりて輪唱のように寄せては返す春の海  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

【評】純粋な「自然詠」。作者が作品の中で行動するものに魅力を感じてきたが、この作品の「輪唱のように」の比喩を発見した作者の手柄にも大きな感動を覚える。与謝蕪村の春の海を詠んだ一句なども連想されるが、時期が時期だけに、3.11と重ねて読んでしまう。あのすさまじく荒れた海の八年後の浜に立って、元の生活を取り戻しつつある現在のかすかな安穏を喜んでいる作者像をも思わせる一首である。

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生かされて生きてしまった八十四年その八年の悲喜のこもごも  (石巻市中央・千葉とみ子)

【評】これまでの八十四年の生涯を「生きる」と言い「生かされる」とも言う両面からの見方が、この作品に厚みをもたらしたと思う。あえて欠点を言えば下の句の「その八年」か。これは「末尾の方の八年」ということだろう。この八年の中に3.11があり、夫との死別があり、孫・曾孫(ひまご)との喜びがあった。それを「悲喜のこもごも」とまとめたのだ。「悲喜のこもごも」からそのような内容を想像するのは読者には難しいのではないか。時間が経過してから推敲を試みてほしい。

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今日の日も無事平穏に暮れたると長押(なげし)の上の妻にささやく  (東松島市大曲・阿部一直)

【評】亡くなった奥様の写真が、長押の上に掲げられている。やや前のめりの角度をもって家族の生活を眺め下ろすかのようだ。古い家にはご先祖さまの写真が幾枚も並んでいたものだ。亡くなった人に今日一日の報告をしなければ今日は終われない、そんな心情をもって実践している生活態度に見習いたいものだ。ゆっくりと小さな声で話しかけるさまが見えるようだ。

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ひと日ずつ歳の欠片(かけら)を拾い積み短歌(うた)に残さん老いの埋もれ火  (石巻市駅前北通り・津田調作)

短歌(うた)メモに良き裏白と切りてゆく葬儀の済みし日程表も  (石巻市開北・星ゆき)

八年目の冷たい雨によみがえる助け求めて叫ぶわが声  (石巻市丸井戸・高橋栄子)

北帰行為せざりし白鳥護岸にて3.11悼(いた)むがごとし  (東松島市矢本・川崎淑子)

風の色知らずに今日も新しき朝を降り来る宙(そら)からの陽よ  (石巻市大門町・三條順子)

祭の夜アセチレン灯の薄暗き夜店に引きし籤(とすけ)はずれき  (石巻市駅前北通り・庄司邦生)

しあわせは何かとふっと考えるそこそこ食べてそこそこ健康  (石巻市向陽町・中沢みつゑ

黄泉(よみ)で待つ地獄極楽の別れ道 目覚めし今朝は母の命日  (女川町・阿部重夫)

詐欺される他人(ひと)のお金の豊かさよ生きるに余るおかねなら良し  (石巻市恵み野・木村譲)

窯(かま)だしの茶碗を取れば温かし外は粉雪春まだ遠し  (石巻市門脇・佐々木一夫)

薪(まき)割りの音がこだます啓蟄(けいちつ)の炉端(ろばた)の燠(おき)は赤々と燃ゆ(石巻市北村・中塩勝市)

愛犬のおらぬ散歩はつまらない口笛吹いてもハミングしても  (石巻市高木・鶴岡敏子)

煮魚(にざかな)の匂いが嫌いと言う恩師四十三年経(た)ち思い出す  (東松島市野蒜・山崎清美)

黙々と勉強する子の足元のかばんの端の赤いお守り  (石巻市桃生町・米谷智恵子)

朝夕に歩く境内 石段を見上げるそばに梅花が匂う  (角田市天神・佐藤ひろ子)

今日もまた「生きがいディ」に交ざらんと送迎バスにいそいそと乗る  (石巻市丸井戸・松川友子)

北上の川面に写る飛行雲童(わらわ)のごとく心が弾む  (石巻市桃生町・千葉小夜子)

【水戸一志 選/評】

◎「今すぐお電話を」と、サプリメントのコマーシャル。健康に気がかりな視聴者が多いことを狙っている。次の瞬間、おなじみのタレントがうまそうな加工食品や嗜好(しこう)品を宣伝する。作者は、どちらにも動じない組か。

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◎ 健康の不安をあおるコマーシャル  (東松島市矢本・菅原れい子)

  体内のリズム蠢(うごめ)く春である  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

  春休みこんなに子どもいたかしら  (石巻市蛇田・大山美耶紀)

  臭いから森・加計・統計ふたをする  (東松島市赤井・川元とき江)

  学校もブラック企業へランクイン  (石巻市築山・飯田駄骨)

  人気もの懸賞つれて四股を踏み  (東松島市赤井・片岡シュウジー)

  もう一度変装見たい法廷で  (仙台市青葉区・吉田真一)

  子が発すSOSを見逃すな  (東松島市矢本・菅原京子)



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